畑中正一・山中伸弥「iPS細胞ができた!」を読む
「iPS細胞が拍動した!」高橋助手からのメールを山中さんはサンフランシスコで受ける。それは36歳の女性の頬の細胞だった。実は個人的なことは特定できず形成手術で余った細胞らしい。
文中にアメリカと日本の科学に対する投資額や研究者の人数について触れているところがあった。思い出したのは、コロナ禍のワクチン。ボクはファイザー社とモデルナ社のワクチンを打ったのだけど、あの緊急事態でいち早く全世界に向けて供給を開始できたのはアメリカの製薬会社だった。ボクが所属する学習を支援する会に日本の製薬会社に勤めていらした方がいらっしゃるのだけど、基礎研究にかける費用の多寡が比べものにならないとおっしゃっていた。本書でも科学雑誌に目を通している人の割合か引き合いに出されている。自分は文系だからなどとあぐらをかいている時代ではないのですね。
しかしながら、そうは言っても本書はどのようにiPS細胞ができたかについて対談している本だから、遺伝子やウイルスについてある程度の知識を必要としている。ありがたいことに対談相手の畑中先生が要所要所で言葉を一般向けにわかりやすく噛み砕いてくださっているので、とても助かります。
改めておさらいすれば、細胞の初期化を受精卵という倫理的に問題がある残る方法でなく、人の頬の細胞を使って成し遂げることができた。これがiPS細胞なわけです。
そして、下に挙げた2025年現時点での課題が、17年前に出版された本書ですでに語られているのです。
①再生医療への応用:
iPS細胞は、様々な細胞に分化する能力を持つため、病気や怪我で失われた組織や臓器の機能を回復させる再生医療への応用が期待されています。例えば、加齢黄斑変性に対する網膜色素上皮細胞の移植や、パーキンソン病に対する神経細胞の移植などが臨床研究や治験段階に進んでいます。
②創薬への応用:
iPS細胞は、病気の原因解明や新薬開発にも役立つとされています。患者由来のiPS細胞を用いることで、病気の状態を体外で再現し、薬の有効性や安全性を評価することが可能になります。
山中伸弥先生は、時折大きなマラソン大会にもランナーとして出場され、テレビに登場している。その姿がiPS細胞が切り拓く夢に向かって、どこまでも続く「研究」という名のレースに挑戦する姿と重なって見えるのはボクだけではないでしょう。
