大島隆之「ヒトラーの時代を生きる」を読む3
1939年9月1日。ポーランド侵攻によって第二次世界大戦の火蓋が切られる。
この時の演説「ポーランド軍の正規部隊がドイツ軍に対して発砲したため、朝の5時45分から攻撃している。爆弾には爆弾で報いる。」
詳細について国民がよくわからない事態について、開戦の理由を捏造するのは、残念ながら歴史上何度も見られる話だ。しかしこのケースはその後巻き込まれた国々と膨大な犠牲者の数を思えば、やはりとんでもない話であります。
本書p166から言語学者高田教授によるヒトラー演説の分析が掲載されている。「序〜破〜急」は、能など日本の伝統芸能に見られる表現技法だが、ヒトラーの演説におけるテンポや強弱によく似ている。また同じ演説技法でも聴き手の状況によって、伝わり方が違う指摘されている。失業問題でパニック化していた聴衆にヒトラーの演説が響き、彼を首相へと押し上げたのだ。
開戦後ヒトラーは演説の回数を減らしていく。マジノ線突破の電撃戦とその後のパリ占領、多くのドイツ人が第一次世界大戦の切除くを果たしたと感じた勝利。その成功によって、軍事的な才能かあると過信したヒトラーは、軍部の作戦に介入するようになっていくのだ。元々が貴族階級出身者が多い軍幹部が、どれだけ一伝令兵に過ぎないヒトラーに対して、心の底で何を感じていたのか。結果的にはスターリングラードの大敗北を含め、ドイツ軍は次々に撤退に追い込まれていく。インタビュアーである筆者は「なぜ、ヒトラーを疑うことがなかったのか?」を執拗に問い続ける。しかし、ほとんどの答えは「ヒトラーやドイツ軍の勝利を疑うことなどあり得ない。」という答えだった。
幼い頃からの体験や教育によって、徹底的に洗脳されるとはどういうことか、その実例が本書には記載されている。
戦後社会科の発足に際して「二度と騙されない」がキーワードとなり、日教組が「教え子を戦場に送るな」をスローガンに掲げていたことが思い出される。本書には、ドイツ各地に埋め込まれているつまずき石が登場する。石の前で歩みを止めて戦争の犠牲者を偲び、振り返ってみようというモニュメントなのだ。
朝ドラ「あんぱん」の主題「逆転しない正義」とは、「困った人・弱い者を守る」アンパンマンに結びついていきます。ヘイトに立ち向かい、静かに平和を守り抜く政治が改めて求められている気がします。
