田村裕「ホームレス中学生」を読む。
著者田村裕は、吉本興業の芸人。ボクは寡聞にして知らなかったのですが、本書は225万部を売り上げたベストセラーだったらしい。
話は著者の体験を下敷きにして描かれているが、冒頭から衝撃的であります。
ある日突然自宅が差し押さえられ、父親は「解散!」と宣言。家に入れなくなった兄姉そして弟=本人の3人は公園の滑り台に寝泊まりする生活が始まるのです。中学2年の本人は友だちの家に世話になるからと嘘をつき、兄姉と別れて公園暮らし。食事、トイレ、洗濯・・全て自力でなんとかしないといけない、都会なのにまるで無人島に取り残されたような生活が始まるのです。
本の表紙は、ホームレス生活の時に齧ってみた段ボール。公園なので当然子どもたちが遊びにくるのですが、うんこ滑り台に住み着いたうんこお化けになった著者は、石を投げてくる子どもたちに防戦一方。お金がないと何も買えないので、自販機の下を探す様子も描かれています。
しかし、夏休みだったから風邪も引かずに済んだのでしょうが、よく公園の遊具に寝泊まりしていて警察に見つからなかったと思います。明らかにホームレスなのですが、問題はまだ中学2年生だというところで、十分に保護の対象でしょう。
近所の人の世話で兄弟3人でアパート暮らしを始めてからは、小学5年生で大好きなお母さんを亡くした少年T青春記の様相を呈してくる。
お兄さんのサポートもあり、高校に入った主人公は工藤さんというちょっと変わった先生に会う。さん付けだが、先生と呼んでほしくないらしい女性の担任なのだ。
工藤さんが悩んでいる少年Tに宛てた手紙は、なかなかいい。生きることに興味を失いかけていた主人公の生き方を180°変えていく。
教師という鎧は、時に児童生徒を身構えさせる。職業上の肩書きが自動的に上下関係に近い緊張感をつくってしまう。
子どもに学ぶ、子どもと学ぶ、目線の奥に教師目線が光っていては、心を開くはずがない。工藤さんと少年Tとの関わりは、読んでいて微笑ましい。
「最初から先生なわけじゃない。いつ誰の先生になれるかなのだ」
前半が稀有なホームレス体験談だとすれば、後半は高校時代の思い出を中心に語っている。そして当たり前だけど、人生、人との出会い、人とのつながりが自分を変えていくという真実を改めて教えてくれる。
