重松清「はじめての文学 重松清」を読む1
「卒業ホームラン」
息子の小学校入学式と同時に、少年野球チームの監督になったお父さんの話。野球は9人、サッカーは11人、バスケットボールは5人と一度に出られる選手の数が決まっている。つまり10番目、11番目の選手は試合開始の時は控えなのだ。
こういう序列は音楽にもあって、オーケストラの弦楽器は指揮者に近いほど実力が上だ。ボクは序列がない合唱を続けてきたけれど、それでも技術系とか言って、大した力もないのに音楽を推進する立ち位置でやってきた。
スポーツでも勉強でも序列化はつきものだけど、それがモチベーションのアップにつながっているのだろうか?
この話に流れている通奏低音は「がんばれば、いいことがある」という言葉。
何のために頑張らなくっちゃいけないのか、学校に通わなくちゃいけないのかが、わからなくなっている子どもたちが増えている。
でも試合に出られなくても、ずっと野球を続けている息子のように、結果に結びつくとかじゃなくても、好きだったなら続けていい。たとえ評価してもらえなくてもそこに自分の居場所があるのなら。
「モッちん最後の一日」
望月くん。「モッちん」があだ名だった主人公が、両親が離婚して山口姓になる話。だから最後の一日なわけだ。
ボクは、長いこと教師をやっていたのだけど、40代後半あたりからは、新しい子どもたちを受け持つ時に、苗字とあだ名を擦り合わせて覚えるのが大変になってきていた。
子どもたちが呼び合っているあだ名と名簿上の名前が一致しないと関係性が進まないのだ。特に専科をやっていた頃は、入れ替わり立ち替わりで、合計200人くらいの子どもがやって来るので、四苦八苦していた。
物語は、離婚の理由とか友だちとの関係とかに、深く突っ込んでいかない。単に呼ばれ方が変わる主人公が挨拶回りをする様子と、父親と焼肉屋で再会する様子だけが少し描かれているだけなのだ。
主人公が感情を引きずらない男の子という設定だからこそ、最後の一日が湿っぽい感傷的な日になるのを防いでいる気がしました。
