オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

童門冬二「中江藤樹」を読む

童門冬二中江藤樹」を読む

読書という膨大な時間を費やす活動に、自分なり流れというか、つながりをもたせたいと思っている。内村鑑三「代表的日本人」安岡正篤王陽明」そして童門冬二中江藤樹」も一連のつながりをもたせた読書のつもりである。本書はかなりの長編であるが、作者があとがきで中江藤樹になりきったつもりで筆を進めたことを告白している。実際場面ごとにリアリティーを感じる描写が多い。まさに渾身の力作である。
個人的には、エライ先生になってからの中江藤樹よりも成長期、発展途上の中江藤樹の描き方、とりわけ学問(儒学)との出会いや後年処士を目指す遠因となる須卜との交流場面などに、小説としての卓越した表現を感じる。とりわけ須卜との交流は、最悪の悲劇的な結末を迎えるのだが、このトラウマが中江少年の心に拭いがたい影を落としたことは疑いようがなく、青年期から脱藩までの鬱々とした時期を送る一因になっている。
江戸時代の学者や先生の伝記など、今の児童図書館では見かけないが、児童用にエッセンスを詰め込んだ中江藤樹先生の伝記図書があってもいいように感じた。








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