オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび642

村井康彦「出雲と大和ー古代国家と原像をたずねて」を読む2

 


本書に吉備国桃太郎伝説が登場する。桃太郎は大和朝廷から派遣された吉備津彦命のことであり、鬼は吉備国で鉄生産に従事していた百済の人々だというのだ。何とかして吉備国の経済力を弱めたい朝廷側は実力行使に出たのかもしれない。この本には他にも丹波尾張など大和朝廷にとって目の上のたんこぶ的な豪族を如何にして支配下に収めていったのか、書かれている。

さて出雲国出雲大社の他に熊野大社という大きなお宮があります。筆者はそれを伊勢神宮の下宮と内宮の関係に例えています。しかるべき内宮造営の前段階として、下宮の役割を果たす熊野大社が必要だったと。出雲大社と言えば、高さ48mの空中神殿が存在したという伝説が残っています。今も巨大な社ですが、これは国譲りの時に大国主命がヤマト政権造営を約束させていたもので、実際の作業が遅々として進まなかったことから、斉明天皇の頃に「早よせんか」的なエピソードがあったと記紀に書かれています。

まぁ譲ってもらったら、あとはこちらのもの。その後ヤマト政権はどんどん中央集権化を進めていくのですから、出雲との過去の関係など構っちゃいられなかったのかもしれません。でも今でも、天皇陛下出雲大社の神殿に入れず、何か古代から続く出雲のプライドを感じます。

あとがきで、邪馬台国は出雲勢力による国で、神武天皇を祖とするヤマト王権とは関係がない。だからこそ古事記日本書紀邪馬台国卑弥呼の記述がないのだと筆者は言う。

本書は出雲系の祭神を現地踏査した記録でもあり、日本の神々に関心のある方にはお勧め  できる本です。

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