シェリーに口づけ
フランスの世俗曲、否流行歌と言えば長い長い間「シャンソン」が定番中の定番であった。
ところが、1970年代の前半、突然美しい旋律と透き通る歌声をひっさげて、ばかでかいサングラスをかけたフランスの若者が、ロック界に登場した。
その名を、ミッシェル・ポルナレフ。
さて、フランスの音楽と言えば、「シャンソン」と呼んでおけば、それで済むと高をくくっていた音楽業界の皆様は驚き、彼の登場を以て、「フレンチ・ポップス」という新しい音楽ジャンルの名前を、考案した。
「愛の休日」「忘れじのグロリア」等、美しい旋律を歌い上げたヒット曲が数多くあるが、中でもずっと人々に親しまれてきた曲が「シェリーに口づけ」である。
「トゥ トゥ プ マシェリー マ シェリー」を数回繰り返しながら、歌い出される冒頭は、そのウキウキしてくるようなノリがうけ、最近でもCMのBGMなどに使われていた。
このウキウキしてくる曲の気分は、Allgroである。これがもしあとメトロノームで10でも遅かったら、ただのしまりのない、だらしない音楽になってしまうだろう。
彼の手による他曲の美しい旋律が久しく聴かれなくなった今でも、「シェリーに口づけ」の楽しい気分だけは、しっかり命脈を保って続けているのだ。