オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび105

名作を読む62

シャミッソー桜「影をなくした男」

苦学生ペーターは、金貨や銀かがザクザク出てくる不思議なポケットに目がくらみ、怪しい灰色の男に自分の影を売り渡してしまう。

影がないことでお化け扱いされてしまうが、有り余る金に任せて、にせ伯爵を名乗り舞踏会を開く。しかし結婚を申し込んだ相手の娘は気絶してしまい、さらには影を売った相手から今度は魂が欲しいなどと言われ、不思議なポケットまで失ってしまう。欲望まみれの人間の醜さに警鐘を鳴らすようなストーリーだ。

この話の救いはまったく欲のない相棒ベンデルの存在だ。最後は自然に影が生えてきて、ベンデルが再び拾った不思議なポケットから今度はペーター慈善病院が出てくる。初めてポケットのお金が人の役に立ってめでたしめでたしという話。

病院の有り難さが、今回のコロナウィルスで改めて浮き彫りになった。医療体制が十分でない国や地域にこそ、ペーター慈善病院ができるといい。