オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ハンドルを握りながら、ちょっとクラシックな気分 2

 子ども達が、クラシック音楽の何から聴き始めたらよいのか?今の音楽の教科書は、楽器の音色や曲の構成を伝えるのに終止していて、その人が一生に渡ってクラシック音楽を聴き続ける「きっかけ」を提供してくれているとは言い難い。

 私自身は、小学校の低学年頃に「未完成」のレコードを買ってもらったのが最初だろうか?例のおどろおどろしい導入部が、おさな心に「古今の名曲と言われている曲が、なぜ、このような出だしなのか」と「?」を刻んでしまい、あの頃適切なアドバイスを与えてくれる人が、周囲にいなかったことが惜しまれる。

 その子の趣味によるだろうが、「展覧会の絵」は、その点誰にでもお薦めできる一曲だ。一曲一曲から曲の題材となった絵画が、まるで音響の向こうから映像として見えてくるような気さえする、抽象度の低いわかりやすさがこの曲にはある。特に「バーバヤガの小屋」のインパクトは、明快そのもので、おそらくはどこかで耳にしたことがあるメロディーから魔女が空中を飛び回る様が容易にイメージできるだろう。

2.展覧会の絵 バーバガヤの小屋

 車の中で聴く演奏は、アンセルメ指揮のスイスロマンド響の演奏である。管楽器がある程度はのびのびとやってくれないと、この曲は様にならないのだが、その点でこの演奏は、なかなか楽しい。管楽器がほどほどに吼えているので、管楽器固有の音色が、色彩感となって、この曲の像を結びやすくしているのだ。

色彩感と言えば、冒頭から当たり前のように管弦楽曲として話を進めているが、この曲がもともとはムソルグスキーによるピアノ曲であり、管弦楽編曲はラヴェルによるものであったことを、思い出される方も多いだろう。つまり、オーケストラで聴く場合は、ムソルグスキーによるデッサンをラヴェルの着色で鑑賞しているのだ。
 ムソルグスキーの骨太な原曲の魅力が、匠ラヴェルの妙技によって色鮮やかな響きを伴って、再創造されているとでも言えばよいのだろうか?

 話はそれるが、EL&P(エマーソン レイク アンド パーマー)というロックのスーパーグループがこの曲を演奏していたことがある。その当時としては、ロックのアーティストがクラシックの名曲に挑み、自分たちなりに咀嚼していたことで、若者達から高い評価を受けたのだが、その後ロックがプログレ化して、音もシンセの使用など、当たり前の話になってしまったことで、今聴くと、あの当時EL&Pに熱狂していたのは、何だったのか?と隔世の感がある。

 その点、クラシック界の人というのは、やはりすごい。ずっと同じ楽譜を同じ音源で演奏していて、何百年も経つというのにまったく聴衆を飽きさせないのである。美しさだけが持っている特権と言うべきか?音楽の普遍性と言ってしまえば、簡単過ぎるか?アンセルメの演奏も、録音されたのは、もうかなり前なのだが、それほどに古さを感じさせない。むしろ、やはり「展覧会の絵」は、こうでなくてはね・・と安心感を与えてくれさえする。
 バーバ・ヤガの案内で、さあ、愛車とともに飛び立とう!ハンドルを操縦桿に変えて、星降る夜の彼方へ!