オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ルネサンス音楽の喜悦 6 ヴィクトリア再会

 30数年の時を経て、ヴィクトリアの宗教曲と再会している。今度は名曲「アヴェ マリア」である。皆川達夫先生による「ルネッサンス合唱名曲選」はこの時代の音楽へアプローチする際の、またとないガイドブックだが、その第1集「スペイン宗教曲集」の冒頭を飾るのが、ヴィクトリアの「アヴィマリア」なのである。
調性が体に染みついてしまっている自分にとっては、歌い始めるとこの曲が何調なのか、わからなくなって少々混乱してしまう。しかし、そもそも作曲された当時、調性などという概念は存在しなかったという事実に改めて気づかされるのである。何よりも音と音とが重なって美しく響き合うことが最優先であり、それが何とかdurとかmolとか、いちいち名前を付けてみたり、理論づけてみることなど、未だなかった時代の産物なのだ。
 練習の中で、指揮者が皆川先生の話として、引き合いに出したのが「天正の遣欧少年使節は。ヴィクトリアのアヴェマリアを聴いている」という仮説で、もちろん真偽の程は、確かめようもないのだが、400年前の少年達は、いったいどんな面もちで、この曲を聴いたことだろう。