オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ミューズの神が宿る時4 最後に付け加えられた歌(後)

 モデルは、トラップ一家であるが、今回のミュージカルで歌われる曲は、すべてオスカーとリチャードが新たに創作した曲である。ストーリー的にも史実と異なる部分があったが、二人にとって大切なことは、このドラマを通して、どのようなメッセージを発信するかということだった。
 さて、オスカーが書いた詞への曲作りだが、大佐がソロで歌うため、伴奏は極めてシンプルに考えた。ギターで和音を奏でながら、これまた極めて素朴に、歌詞のイントネーションがそのまま旋律になったようなメロディーをつけてみた。
 曲作りとしては、妙な小細工は一切労さず、真っ向勝負である。しかし、単純ではあっても一度聞いたら忘れない親しみやすさと花のような優雅さ上品さを兼ね備えており、なかなかよい出来だと、リチャードは思った。

 すでに病床にあったオスカーは、ことのほか喜んでくれたことも嬉しかった。ただ、まさかこの歌がオスカーの遺作になってしまうとは・・・。

 ミュージカル「サウンド オブ ミュージック」の上演期間中に、オスカーは帰らぬ人となった。長年コンビを組み、ブロードウェイで数多くのヒット作を作ってきたリチャード・ロジャースオスカー・ハマースタイン二世コンビは、オスカーの死によって解消された。
 しかし、オスカーの遺作となった「エーデルワイス」は、劇中歌の域を脱し、実際のオーストリア国歌・国民歌と間違えられるほど、広く知れ渡った曲になっていった。
 リチャードは、コンビを組んでいたオスカーのことを思い出しながら、なぜこの曲を挿入することに、あれほど彼が執着していたのかが、わかるような気がした。
『オスカーが歌に込めた平和への願い、故郷を愛する気持ちが、数多くの人々の共感を呼んだのだろう。そして、これからも時代を超えて、歌い継がれていくに違いない。』と・・。

 ミュージカル「サウンドオブミュージック」より
       「エーデルワイス