そんなある日、体調が優れないオスカーが「最後にこの歌を入れよう」と提案してきた。オーストリアの愛国歌として、劇中で歌うのだと言う。
たしかにナチスドイツの圧力に屈しない大佐の気持ちを表すのに、オーストリアという国を象徴する劇中歌を挿入するのは「よいアイディアだ」とリチャードも同感だった。オスカーの書いた詩は、次のような歌詞だった。
エーデルワイスよ 毎朝 私に ほほえみかける
愛らしく 清らかに輝く 私に会えた喜びにあふれて
雪のように白い花よ 咲きほこれ いつまでも
エーデルワイスよ 永遠に 祖国を守っておくれ
歌詞を読み、リチャードは、少々木訥であるが実直な心の持ち主である大佐が歌うのにふさわしいと感じた。実際には、オーストリアにこのような歌はない。しかも戦争中は、オーストリアの人々はナチスドイツによる併合について協力的だった人も多かったと聞く。
それでも平和を求める人々へ、故国を愛する人々へ、発信するメッセージとして、この曲は是が非でも挿入しなければならないと考えたのだ。