その才蔵を主人公に「槍に捧ぐ」という小説が、現在神奈川新聞に連載されている。現在物語は、秀吉軍と家康軍が激突している小牧長久手の戦いあたりを進行中なのだが、これまでのところ才蔵の所属していた武将は、いずれも負け続けている。織田対斎藤の稲葉山城での負け、秀吉対光秀の山崎の戦いでの負け、秀吉対勝家の賤ヶ岳の戦いでの負け、いずれも才蔵は敗軍の側で戦闘しており、一戦闘員に過ぎない才蔵が、生き延びてきたこと自体が奇跡的な感じさえする。そして今回の小牧長久手の戦いも劣勢である。
才蔵は司馬遼太郎の「おれは権現」でも主人公を張っているのだが、おそらくは一戦闘員としては、戦国最強かもしれない。
最後まで部将として一軍を率いることなく、一戦闘員として生涯を貫き通した生き方も共感を呼ぶが、その戦闘履歴のほとんどが負け戦に身を投じていたという経験も非常におもしろい。今後の筆の運び方が楽しみな小説である。
