オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

内村鑑三「代表的日本人」を読む

内村鑑三「代表的日本人」を読むd

新渡戸稲造の「武士道」と双肩をなすこの名著を読むきっかけは、教育者としての中江藤樹先生や二宮尊徳先生について、学んでみたい気持ちがきっかけでした。西郷隆盛上杉鷹山二宮尊徳中江藤樹日蓮上人を代表的日本人として列挙する背景には、著者内村鑑三自身の倫理観が強く反映しているように感じる。五人のいずれもが、己の欲望にたいして、極めて禁欲的で倹約家あり、且つ己の信じるところに忠実であり、そのために勇敢でさえある。一時代前までは「清く、正しく、美しく」が美徳とされていた時代があったように感じるが、まったくその徳を体現してしまったような代表なのである。高度成長期以降の時代は「消費は美徳」とされ、やがてバブルの飽食の時代となり、求める指標が180度回転してしまった感がある。しかし、今後格差社会がますます拡大する中で、案外「清く、正しく、美しく」が復活を遂げるような予感もする。
道徳の匂いや説教臭さにアレルギーがある人は、本書に過敏に反応し、アナフィキラシーを起こしてしまうだろう。本書の意図は結局のところ、五人の日本人の生き様を通して、ある道徳を説くことにあるからである。それは、誠実さであり、謙虚さであり、公平さでもあろう。それらに気づくことに大した時間はかからないが、同時に現代に生きる人々がどこかに置き忘れていそうな心のあり方でもある。
いわゆる偉い人とは、こういう人たちのことを言うのだよ。わかったかね!的な・・・ちょっとやそっとでは反論が困難な威圧感も本書は確実に蓄えている。しかし、それはあくまでも内村鑑三的な価値観の範囲内である事に気付いていることが、本書の虜になってしまわないためには重要だろう。そんなちょっとひねくれた読後感である。





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