オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび308

川田晴久美空ひばり」を見て読む

 


世阿弥本の後に、不世出のエンターテイナー川田晴久さんと美空ひばりの本を読むと、結局舞台芸能って何だろう?と言った疑問が湧いてきます。でも今はそちらに深入りするのは我慢して、まずこの貴重なドキュメンタリーについて、書いてみよう。

本書は三部構成+一枚の付録CDで構成されている。前半が川田晴久美空ひばりのハワイ+アメリカ西海岸公演の記録写真集。時は1950年5月、日本はまだGHQの統治下にあった時代。ハワイでの大歓迎、熱狂ぶりと西海岸でのドサ回りに近い状況が好対照だ。

続いて、橋本治さんのエンターテイメント論。川田晴久が何を取り込み、自分の芸を創り上げていったのか? 浪曲広沢虎造、映画のマキノ雅裕、ブギの笠置シヅ子、ショービジネスの三木鶏郎など、大物の歩んだ路線と比較しながら語っている。個人的には、オペラから浪曲までを自在に歌いこなした川田晴久の歌唱技術や発声論にまで踏み込んでほしいところだ。なぜならそこを探ってみて、初めて美空ひばりの驚異的な歌唱力の秘密が解けるからであります。まぁ、それもまた改めて。

最後に川田晴久の娘である岡村和恵さんが、後年見つけた渡米公演時の日記を元に、美空ひばりとの思い出を綴っている。前半の笑顔溢れる写真からはわからない公演の様子、本人の苦労がよくわかる。

付録のCDには、渡米中録音された川田晴久美空ひばりのやり取り等が収められており、当時まだ13歳のひばりの様子が伺える。

 


現在は、空前の漫才ブームと言われるけど、舞台+映画+歌の世界を縦横無尽に動き回り、人々を熱狂させ続けているエンターテイナーが今何人いるだろう? コロナ禍で志村けんを失ってしまった今、その喪失感を改めてズシンと感じてしまう。