オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ブラームスの合唱曲にひたる 第五夜

作品54運命の歌をきく。ブラームスの合唱曲を初めて聴いたのは、たしかこの運命の歌だったと思う。どこかの市民合唱団の演奏会で取り上げられていた。ただし、その時の伴奏はピアノによるもので、この曲にとって、合唱のかけがえのないパートナーである管弦楽の響きを味わえた記憶がない。
この曲は、前半の比類のない甘美な音楽つまり神々の世界と、後半の激しい緊張を引き起こすおどろおどろしい音楽つまりは人間の世界との対比によって構成されている。その対極に位置する世界が、ブラームスの手にかかると特徴が極限まで表現されてしまい、その落差はまさに天国と地獄さながらである。ジェットコースターのような急降下なのである。救いなのは、後奏に再び明るい和声による管弦楽が付けられていることで、もし後奏がなければ、聴きては沈みきった心の置き場に困ってしまうだろう。曲の振幅の大きさで音楽のスケールを測るとすれば、この曲は、たしかに大変な曲であるし、この曲が名曲として高く評価されてきた理由でもあるのだろう。
しかし、今の私は、詩の内容を横に置いて、前半の美しさにしばしの間ゆっくり浸っていたい。それが今、私がブラームスの合唱曲に求めている響きなのだから。