村井康彦「出雲と大和ー古代国家と原像をたずねて」を読む1
奈良盆地に三輪山という山があり、麓に大神神社がある。御神体が山そのものという古代の自然崇拝を受け継いでいる。ところが祀られている神様は大国主命なのです。なぜ出雲大社の神様が奈良盆地の真ん中に祀られているのか?
どうやら日本の統一過程で、初めてまとまった国造りに成功したのは、大国主命らしいのです。大国主命とは、あの因幡の白兎に登場する意地悪なお兄さんたちと好対照のやさしい神様です。本書は、その後どのようにヤマト王権へ移譲されていくか? を推論している。
著者は出雲国の名残を磐座と四方突出墓を頼りに訪ねていく。(四方突出墓とは四隅がヒトデのように延びた古墳でして私は本書で初めて知った)本拠地である出雲から丹波・北陸・信濃と、出雲の影響は日本海側からフォッサマグナ上まで広がり、大きな影響力があったことが想像できる。北陸には出雲と縁の深い高志国があった、読み方はコシ。やがて越の国と変化するのでしょう。
日本古代史最大の謎は「邪馬台国」。筆者はヤマト説を採り、九州北部には大陸との窓口を担っていた伊都国があったとする。所在以外の疑問は、邪馬台国とヤマト王権との関係で、本書では神武東征によって大和盆地にあった国が滅ぼされており、邪馬台国とヤマト王権は非連続であるとする。ここで注目しているのが邪馬台国を支えていた豪族が出雲出身であったということ。
総帥饒速日命は、神武軍と果敢に戦い邪馬台国を守ろうとした長髄彦を殺し、神武軍に恭順する。神話にいう国譲りとは、この件であると筆者は推論している。
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