名作を読む16
子どもたちは、勇者の話が好きだ、だからハリー・ポッターなど巨大な敵に立ち向かう話がよく読まれる。
私が子どもの頃、よく西部劇を観ていた。インディアンをステレオタイプ的に悪者として登場させるのは、今考えるといかがなものか?と首を傾げざるを得ないが、当時は考えなしだったから、カッコいいガンマンやカウボーイとかに憧れていたわけだ。
都合のよい白人が善で、侵略されているネイティブ・アメリカン側が悪という、歪んだ勧善懲悪史観が西部劇には色濃く影を落としている。勧善懲悪こそは今も昔も最もわかりやすく価値観を押し付けられる手段なのだ。
ところで、この話は、名犬クルーソーと飼い主のディック、それにディックが飼い慣らした野生馬のチャーリーを中心に、開拓当時のアメリカ西部でくり広げる冒険談である。読者はクルーソーは賢さやディックの勇気に心躍らせて読むわけだ。そしてジョー、ヘンリーと共に、インディアンとの平和共存交渉に出かけた。ところか交渉がなかなか上手くは進まず、命の危険にさらされることもしばしばあった事が語られる。
その後の歴史は、周知の通りで、開拓者精神とやらの美名に、暗闇が覆われてしまっているのである。
これは、じつはアメリカに限った話ではない。我が国でもヤマト政権とアイヌ民族の間に、アテルイやシャクシャインの例を始めとして、いろいろなトラブルがあったわけだ。そんなことに思いを馳せながら、55年前は少年だったおじさんは、あっという間に読んでしまいました。