オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび551

加藤周一梁塵秘抄」を読む1

 


大河ドラマなどで平安期の歌舞の場面が出てくると、踊っているのは白拍子である。加藤さんは、今様を歌っていた人々として他に傀儡子(くぐつ)がいたと言う。人形遣いの人々のことであろう。梁塵秘抄は彼らの歌謡だったのだ。だから宮廷内で生み出された文化ではない。

紫式部に代表される平安文学は、想像の世界を遊泳していた。そこで描かれる世界はあくまでも紫式部の脳裏から生まれたイメージの産物であり、当時の庶民の生活とはほとんど関係がない。ところが梁塵秘抄は、貴族社会=宮廷から遠いところで生活している人の歌なのだ。クラシック音楽とポピュラー音楽の落差に近いかもしれない。

実は図書館内で梁塵秘抄に関する本が、同じ書棚の近いところに収まっていた。もう一冊は五味文彦先生の本。五味先生の方は中世史の専門家だけあって資料を事細かく紹介されている。加藤周一さん。日本の知性を代表する方であるが、そもそもこの方のご専門はいったい何なのか、よくわからない。医者であり百科事典の編纂に関わっている。活動の足跡を追いかけるのも一仕事のような方であります。ちなみに本書の冒頭でもシューベルトからレヴィ=ストロースまで縦横無尽に無人の広野を走るが如く筆を進めている。ボクの興味の対象は、書かれている中身と同じくらいの比重で著者に向いているので、今回は加藤周一さんの本を選んできました。

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