オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび657

伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読む

 


本書の始めの方に、ゾウとアリでは時間の感じ方が違う話が出てきます。また客観的な情報が個人によって異なる意味に捉えられることがある話。視覚障害の皆様には、晴眼者には感じられない感覚があるのだとも。第一章空間では、目が見えないからこそ脳にスペースができて、視覚情報への対応に追われている晴眼者とは違う空間把握ができる。例えば見える人が二次元的に、例えば富士山を絵に描いたように認識するのに対して、目が見えない人は三次元的に立体的に捉えると。

実は学校教員をしていた頃、視覚障害の疑似体験としてアイマスクを使ったことがありました。けれど筆者はそれは感覚の遮断であり引き算に過ぎないと言います。目が見えないからこそ獲得してされている感覚に、読み進める毎に目が見えない方の感覚から学ぶことがたくさんありそうな気がしてきました。

先日養老孟司さんの本を読み、自分の身体の感覚を信じることを説いていらっしゃいましたが、伊藤さんの感覚の捉え方とどこか通じる気がします。

「鑑賞とは、自分で作品を作り直すこと」と言います。目が見えないので陶器を触ってもガラス製と感じるかもしれない。けれど近くの人がこれは陶器ですと言った瞬間に、それは陶器だとわかるわけです。ボクは抽象美術に対する鑑賞眼が不足していて、よくわからない以上に理解ができないのですが、自分で作品を作り直してよいなら、ある程度まで自由に鑑賞できそうです。もっと頻繁に発信している音楽も本当は抽象の最たるものなのですが「この響きはこういうことなの!」などと勝手に決めつけずに、もっと自由な距離感で楽しめればいいのでしょう。

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視覚障害の方々の前での琵琶演奏も、普段ボクが感じている感覚とは異なる捉え方をしていらっしゃるかもしれません。是非演奏後には感想を伺ってみようと思います。