オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび366

安部公房「笑う月」を読む1

 


夢の話である。タイトルの笑う月とか、かさぶただらけの化け物とか、悪夢に苛まれた体験が語られる。ボクも子どもの頃怖い夢をよく見た。柱時計の前に骸骨が立っていて、時計の針の進み方変になってしまう夢とか、黒い球体状のものにボクがとても怯えている夢とか。最近でもお決まりの高い崖から落ちる夢はよく見る。これは落ちた瞬間に目が覚めるパターンなのだが、ふくらはぎがつりそうな位痛い時がある。

安部公房は、夢へのこだわりが強い人で、起き抜けにすぐ夢の内容を録音できるように枕元にテープレコーダーを置いておき、吹き込んでいた話が本書に出てくる。実際彼の創作の非現実性は夢の世界と紙一重な気がする。そして夢に出てきたものが創作の種になっているのだろう。

非現実性と書いて、作曲のことを思い浮かべた。作曲も極めて非現実的な抽象の世界を作る作業だ。ボクは目が覚める前に旋律やハーモニーが頭の中で響いている時があり、時折それを楽譜に書き留めているのだけど、音楽も夢と紙一重なのかもしれない。