オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび654

橘玲「テクノ・リバタリアン」をkindleで読む

 


序章において、著者は、保守とリベラル・共同体主義リベラリズム功利主義と市場原理の否定・・様々な対立軸を提示しながら、タイトルにもなっているテクノ・リバタリアンの輪郭を浮かび上がらせている。保守とリベラルは政治的な立ち位置を表すためによく使われるが、現時点で自分が共感できる思想は何か? 振り返る作業にも有効な気がします。

続いてシステム化された脳と共感脳の比較が出てくる。シリコンバレーの成功者たちは、システム化された脳によって、高度な数理処理能力を発揮しているが、他者に共感する力が弱いと、その典型をイーロン・マスクを例にして語っている。

ピーター・ティールを紹介する中で「欲望の模倣」という言葉が出てくる。日本版に言い換えれば「立身出世」とか「よい大学からよい会社」が当たるのだろう。周りがみんなそうしているから、なんか良さそうだし、自分も真似してみる。そのような動機=欲望の模倣によって、どれだけの時間と能力を浪費していることか!

テクノ・リバタリアンたちが、いかにして中央集権国家の呪縛から逃れ、独立した自由な立ち位置を確保するか? その課題について、貨幣・財産・投票・・いろいろな試みがなされている状況が語られる。

ネタバレ的ですが、最終章でコンストラクタル法則が紹介されている。

「流れがあり、かつ自由な領域があるのなら、より速く、よりなめらかに動くように進化する」という。

この法則は人間社会にも当てはまり、狩猟採集時代に150人以内で集団生活を送っていた時代には、それぞれの個性を認識できたが、より多くの人々と暮らし始めることにより、組織的な階層が生まれたと言う。川が支流を作りながら海に向かう例えが出てくる。支流が階層なのだろうか?

しかし、階層=自分にとっての自由を阻害する組織であれば、本来は個人的に逃れたいのだ。旧来続いてきた年功序列トップダウン型の組織は、日本経済から退場するべきなのかもしれない。そしてその兆候は終身雇用を当てにしていない世代に、はっきりと見られる気がします。

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