オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ミューズの神が宿る時4 最後に付け加えられた歌(中)

そんなある日、体調が優れないオスカーが「最後にこの歌を入れよう」と提案してきた。オーストリアの愛国歌として、劇中で歌うのだと言う。 たしかにナチスドイツの圧力に屈しない大佐の気持ちを表すのに、オーストリアという国を象徴する劇中歌を挿入するの…

ミューズの神が宿る時4 最後に付け加えられた歌(前)

「今回は、なかなかよくできた曲が多い。」決してうぬぼれからではなく、率直にリチャードは、そう思った。 「ドレミの歌」「私のお気に入り」「すべての山に登れ」「ひとりぼっちの羊飼い」そして劇のタイトルでもある「サウンド オブ ミュージック」。どの…

ミューズの神が宿る時3 1947/5/27 ベルリン(後)

アインザッツがはっきりしない。とりわけトスカニーニとの比較において、ヴィルを評する際に、言われ続けていた課題である。しかし、その結果論として、引き起こされる「音の立ち上がり」のずれが、微妙な音の「波濤」を造形しているのも、ヴィルの演奏の特…

ミューズの神が宿る時3 1947/5/27 ベルリン(中)

事情を知らされなかったのは、残された楽団員である。マエストロは行方不明であるが、いつかきっとベルリンに戻ってくるはず・・という凡そ根拠のない希望だけを頼りに、戦後の瓦礫と焼け跡の中で、細々と練習を続けていたのである。 ヴィルが占領地での演奏…

ミューズの神が宿る時3 1947/5/27 ベルリン(前)

「もうここでは演奏できない」そう思った。空襲により市街地が爆撃を受けている影響で、会場は停電。演奏中のモーツァルトの交響曲40番は、2楽章で中断させられてしまった。1945年1月23日のことである。 ヴィルは、ベルリンをもはや離れるしかなか…