オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ほいほいおじさんとハードロックを聴こう 5

 クリームの素晴らしき世界

 ツェッペリンの話を切り上げて、次に紹介するのが「クリーム」。今までツェッペリンの演奏能力の高さについて、言及してきたけれど、こと演奏技能に関しては、それに勝るとも劣らぬ実力を持ったバンドが、このクリームである。そもそも、私は何を持って演奏能力を判断しているかと言えば、ロックに関しては、即興演奏における緊張感の持続を基準に挙げたい。

 ハードロックに長い間奏とそれに伴う即興演奏はつきものだけれど、自己満足にしか聞こえないような「早く終わりにしろよ!」みたいな演奏もあれば、いつまでもその演奏を聴き続けていたい、素晴らしいインプロヴィゼーションもある。クリームの演奏は、まさに後者の方で、邦題「クリームの素晴らしき世界」の二枚目は、ライブ録音なのだが、そこで繰り広げられている演奏は、息を付く間も与えない程の集中力を発揮した名演奏だ。

 クリームのライブ演奏では、泉が湧き出るように音のアイディアが、楽器からほとばしってくる。次のフレーズでは、何を弾くか、聴衆は「はらはら、どきどき」させられながら、じっと耳をそばだてる。それは、もはやほとんどジャズの世界なのだが、ブルースを基にしたコード進行や思いっきり巨大な音で演奏しているところが、やはりロックであり、ハードロックの範疇に入るのだろう。

 さて、昔からのロックファンには改めて紹介の必要もないほどなのだが、このすさまじい演奏を繰り広げている3人組の正体は、ベースがジャック・ブルース。ギターが、ご存知エリック・クラプトン。ドラムスがジンジャー・ベイカーというロック史上最強のトリオだ(解散後40年以上が経過しているが、未だにこの3人組を超えるトリオは出現していない)。

 その3人組が残した最高のアルバムが二枚組の「クリームの素晴らしき世界(WHELLS OF FIRE)」である。彼等の実験精神あふれる演奏にふれたい人は、スタジオ録音盤から聴き始めるとよいし、ものすごい即興演奏の醍醐味を味わいたければ、二枚目のライブ録音盤から聴くのがいいだろう。

 この3人組には、ギターの神様「エリック・クラプトン」が含まれているわけで、クラプトンファンにとっては、若き日のクラプトンの勇姿を「クリーム」の演奏に求めたい人が大勢いるかもしれない。だが、クリームの演奏では、神様クラプトンは中心人物(リーダー)として演奏しているわけではない。もちろんクラプトンのプレイも凄いのだが、個人個人の技能云々というよりも、むしろ、3人が渾然一体となり、常に三つどもえの真剣勝負で、火花を散らし合っている状態が「クリーム」なのである。

 ロック史にその名をとどめる「クリーム」。若いロックファンにお薦めのグループです。