オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

宮城谷益光「草原の風」(上)を読む

宮城谷益光「草原の風」(上)を読む

覇を唱えた英雄を描いた歴史小説は多い。我が国なら愛知県が誇る三英傑、信長、秀吉、家康は、歴史小説のみならず大河ドラマの常連であるし、中国大陸に目を転じれば、項羽と劉邦の覇権争いを始め、三国志のヒーローに至っては、もはやゲームのキャラクターとして大活躍中である。
この本は、後漢光武帝が主人公だ。後漢という帝国は、劉一族の王朝なので本書にはやたら劉を名乗る人物が登場し、その一人一人が何者なのかをしっかり見極めていかなければ、読み手の混乱は必須である。さらに三国志の時代と近いので地名に馴染みがある人にはありがたいのだが、地名を地図上の位置と照らし合わせながら、登場人物がどこからどの方向へどのくらい移動しているのかを、理解しながら読み進めなければならない。
上巻は、主人公劉秀が挙兵に至る青春時代が描かれている。儒教、五行による倫理観や運命論を背景にしながら、人物の器を測る尺度が作者の語りに見え隠れする。しかし、それは同時に現代日本の人物評価に通じる尺度でもあり得るように感じた。





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