オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび121

名作を読む69

リットン作「ポンペイ最後の日」を読む。

イタリアツアーの中にポンペイ遺跡見学が含まれていることがある。近くにあるベスビオ火山の噴火によって、灰に埋まってしまったローマ時代の古代都市跡だ。ベスビオ山への登山電車のCMソングだったフニクリフニクラは、鬼のパンツなどの替え歌となって、親しまれている。

この物語の前半は、かなり退廃的である。プラプラと浴場や宴で時間をつぶしている金持ち、胡散臭い宗教、かわいそうな身の上の奴隷。楽しみと言えば罪人をライオンや虎と戦わせる残酷なイベントくらい。初期キリスト教のささやかな集いだけが、ことさら「はきだめに鶴」的に違った色合いで描かれている。

後半に入ると、話は急転、主人公があらぬ罪を着せられ、ライオンと戦う罪人になってしまう。話の展開は加速し、ライオンとの死闘、無実の証明、火山の爆発、逃げまどう大混乱、船での脱出と進む。

少し背筋が寒くなるのは、前半の退廃的な社会が現代社会そっくりで、いつ想定外の災害が降りかかっても不思議ではない状況も今と似ているのだ。

ひょっとして作者は預言の書として書いたのだろうか?