オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび367

安部公房「笑う月」を読む2

 


S・カルマ氏に描かれるマネキンや駱駝に対する偏愛は、どこからくるのか? 本書「シャボン玉の皮」では、ゴミに対する執着心が大きなスケールで記されている。

「廃物」は「有用性」に屈服したりすることは不可能だろう。・・・ゴミに挑戦しようなどという思い上がりが、ゴミの再武装をいっそう強化させたのだ。・・・まだ自分がゴミそのものではないという自覚(もしくは幻想)が、かろうじて日常を支えてくれているシャボン玉の皮なのだ。

SDG sとか、まだ何とかなるはずさと夢や希望を振りまいている人々に、とっくの昔から安部公房は警鐘を鳴らしていたのかもしれない。

そして、お墓などと数百年程度、体裁を繕ってみたところで、結局はゴミに帰って行く運命にある読者を奇妙な感覚で包み込む。不思議な読後感が読み手を包む話でした。