オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび442

工藤美代子「サザエさん長谷川町子」を読む3

 


漫画のアイディアを練るとき、町子はスルメとか昆布を口にしており、胃痙攣を起こすことがあったという。ストレス過剰なのだ。だからおとなしい外面とは真反対で同居する家族にあたることもあったらしい。

力道山が亡くなった日に、町子は家出して厚生年金会館にいた。ヒーロー急死のニュースを見て「人生は短い」と感じたらしい。その後昭和42年町子は胃がんの手術を受ける。本人には胃がんであることは最後まで知らされなかった。知らされなかったことで町子の活躍時期を長引かせた気がする。

国民的な漫画「サザエさん」の著作権侵害の訴訟は、私もよく覚えています。バス会社がサザエさん観光・サザエ観光を名乗り、キャラクターを描いたバスを走らせていたことが訴訟沙汰になったのだけど。著作権の保護という表現者にとっては、何より大切にしなければならない部分を町子は果敢に守り通そうとしたのだ。

ご存知の通り、サザエさんの版権は長谷川家による姉妹社が所有していた。本書でその収入についてふれているが、一家が億万長者であったことは間違いない。ボクには生涯無縁だろうけど、抱えきれないほどの資産には必ず不幸の影が忍び寄ってくるらしい。晩年の姉妹の描写にその感は深い。漫画の中で和気藹々と笑いながら生活している磯野家とは、反対方向の道を長谷川家は歩んでしまったようだ。