高野秀行「間違う力」を読む1
ジョン万次郎と著者が違うのは、万次郎は漂流の末、アメリカの船に救助され、そこから運命を切り拓いていくのですが、著者は初めから人が訪れないような地域に自ら進んで出向いているのです。当然危険なわけですが、行ってみなければ実際のところどうなっているのかわからないわけで、著者の勇気にはある意味感心します。
もう一つ、気持ちが拡散し取り止めもなくなってしまう人にありがちなのでしょうか、自分自身の行動原理をお約束ごととして十ヶ条にまとめています。本書もその構成になっているのですが、それはマニュアル本のように読者を説得するというよりは、自分を納得させようとしているように感じます。
お約束ごとの第一条が「他人のやらないことは無意味でもやる」。他人のやらないことをやるのは、他の同業者との差別化と説明が付けられそうだが、あまりにも無意味であれば普通撤退してしまうだろう。どうやらこの発想は大学(ちなみに早稲田)の探検部で培われたらしい。
第六条「怪しい人にはついていく」では、詐欺に引っかかった経験が書かれているが、人を警戒する安全弁のような自己防衛本能が弱いのではなかろうか? と思わせる。人生何でも経験したもの勝ちとは言え、ここまでの経験はしたくない。