オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび 589

ピーノ・アプリーレ「愚か者ほど出世する」

 


本書は動物行動学者のローレンツ教授にインタビューした経験から始まる。「人間の知恵は必要があれば、いつでも解決の出口を見つけ出す。しかし、ひとたび解決法を見つけてしまうともう知能を使う必要はなくなる。ただまねだけしていればいいわけだ。反復は創意工夫とは違う。そこで知的資質は衰えてしまう。刺激がなくなるからだ。」さて、生成AIという解決法を手にした私たちはこの先どのように知能を使いこなせばよいのだろうか?

大げさに言うなら本書の問題提起は「人類はこの先も知的な進化を継続できる」「人類はとうの昔に知的な進化を止めて、この先はますます愚かになっていく」のどちらに針が振れるのか? であります。ネアンデルタール人は現代人より脳の体積が大きかった。だから死産の割合も高かったようだが、はて? 脳がコンパクトになったことにより知的な活動の高まりがみられたのか、どうか?

ところで、魂という字はよく目にするけれど魄はあまりお目にかからない。陽陰の関係で後者は陰の意味で肉体に初めから宿しているものらしい。能力のない者(=本書でいうバカ)でも組織・社会が維持していける。だからこそボクのような者にも居場所があるのかもしれないが、その組織を立ち上げた個人の志は引き継がれない。むしろ居場所を確保するために四苦八苦して悪知恵を働かせる。これからは生成AIの登場によりますます居場所の確保が困難になるだろう。

「いかなる階級社会でも各人は無能がバレるところまで昇格する。そこまで昇ったら自分の無能を隠すために仕事を増やす」思い当たる節が「あるある」化してきますなぁ。

故事昔話には愚か者を装った賢者が登場する。日本史なら「うつけ者の信長」とか・・。愚かと利口の境目は時としてわかりにくくなるけれど、生成AIの時代は既成の知識技能に頼って生きていくことは難しそうですね。

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