オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ビートたけし「路に落ちていた月」を読む

ビートたけし「路に落ちていた月」を読む

この本は帯でさくらももこが書いているように、毒のある童話集だ。漫才のネタとしてメモっておいた下書きを集めて本にしたように思える部分もある。改めて言うまでもないことだが、コメディアン、映画監督、俳優、画家、作家・・・それらの全てで他を凌駕する才能を評価され 、とりわけ映画に至っては、もはや比類なき「世界の北野」である。
それら四方八方に噴出している才能のうち、私はビートたけしの書いた本、それも口述筆記や対談でない本がお気に入りだ。文字という発想と表現の間に微妙な間を伴う成果物の中に、いつもの危なっかしさが少し影を潜め、安心して彼の世界に入っていけるのが理由かもしれない。
さて、いわゆるスパイスの効いた文章というのは、その言葉が社会風刺として世相に突き刺さるような、または冷めた人間観察に基づく愚かさの抽出に、その本音が隠されていると思う。ところがこの童話集は、そんな面倒くさい手順やインテリ臭さとは無縁である。下品な話は下品なまま、くだらない話はくだらないまま、そのまま書かれている。しかもそれだけである。所詮お笑いとは、そんなものと決めてかかっている風も感じられるが、読者は乾ききった声の出ない笑いとともに、たけし独特のエッジの効いた視点を読み取ることだろう。


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