オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび216

岩波明「天才と発達障害」を読む

 

著者は、東大医学部卒の精神科医である。この学歴は、偏差値信仰信者の皆様にとっては最高水準であり、著者自身が学校教育で育成される能力の秀才であるのだ。しかし、知能指数などで測れる優秀さと本人の人生において創造性が発揮できるか否かは、あまり関係がないらしい。そのことをルイス・ターマンの研究を例に書いているが、受験能力の高さが著者自身の創造性にどう関係したか?は書かれていない。東大医学部というところは、森鴎外斎藤茂吉安部公房など、文学史を飾る天才を輩出しているのですが・・。

本書では、文学史、芸術史、科学史を彩る天才の皆様が、発達障害統合失調症であった可能性を述べている。読めば読むほど、天才であったが故の生きづらさが伝わってくる。あっ、この人もそうだったの?という例が次々に示されていく。

最終章では、オランダの個別指導、アメリカのギフテッド教育やイスラエルのプログラミング教育を紹介するとともに、日本の教育の課題をしている。一言で言えば、一人ひとりの特徴や個性に寄り添った教育が大切だということだ。文科省はようやく35人学級の実現に向けて踏み出したが、そこまで40年! つまり私の教員人生分の時間がかかっている。国の教育制度に期待せず、ヨーロッパの伝統ある家庭教師型の個別指導塾を広げていくべきなのだろうか。