オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび297

白鵬翔「相撲よ!」を読む

 


身長175cm、体重68kg。新弟子検査の基準をクリアできない色白で痩せっぽちの少年が、将来大横綱になると誰が予想しただろう。しかも弟子入りの数日前まではモンゴルに帰って、レスリングを学ぼうか? などと考えていた少年が。

白鵬という四股名の由来は、誰もがみんな知っている「柏戸大鵬」から一字ずつ拝借したもの。最初は柏鵬だったらしいが、そんな名前を付けて活躍しなかったらどうするのか? と言われて

柏の木だけ取ったらしい。

白鵬関を双葉山と比較する話は、まだ彼が横綱になる前から出ていた。白鵬自身も双葉山の取り口を研究していて本書にも書いている。「勝ちにいかない相撲」が大切という。勝負事の相撲で勝ちにいかないとは! 土俵に上がったら無心になり、流れにしたがって体が自然に動くに任せるということらしい。あと「勝っても負けてもいい」という勝ちにこだわらない無の境地についてもふれており、座禅の経験があるらしい。本当にモンゴル出身の人だろうか? と思ってしまう。そして、双葉山の「泰然自若」「木鶏足りえず」に話が繋がっていくのだ。ちなみによく言われる「心技体」は、元々「心気体」だったらしい。

立ち合いの強烈なカチアゲや、ハリ差しなど、勝つためにあの手この手を繰り出していた晩年のスタイルと矛盾するようにも感じるが、それはおそらく本書が全盛期に書かれた本だということと関連しているのだろう。

白鵬関が大相撲に残した巨大な足跡は、今後もずっと語り継がれていくだろう。私は単に数学で残された記録よりも、大相撲興行が度重なる事件によって存在を危うくしていた時に、白鵬関がファンの気持ちを繋ぎ止めてくれていたことを忘れてはならないと思う。