三浦裕子「能や狂言の音楽入門」を読む2
能管という楽器に実際に触れた経験がないのですが、全く不思議な音を奏でる。劇そのものの主題が幽玄とか現世と死後の世界を行き来するストーリーなわけで、なるほど合っている気もする。ヒシギと言われる高音は、縄文の頃から吹かれている石笛に似た音色というが、神社に奉納されることもある石笛と夢幻の世界を奏でる能管には共通点があってもおかしくはない。
さて打楽器。雛飾りの五人囃子はそのまま能楽の楽団であります。小鼓は適度な湿り気が、大鼓は極端に炙って乾燥させないといけないとされ、音色の変化は結局奏者の手加減によるわけで、指にかなりの圧がかかるのだろう。プロテクターのような指サックをはめている。
さらに、ハッとかヨッとか、掛け声を入れる。よくわかっていなかったのだけど、ハッは二拍半と六拍半、ヨッは四拍半で入ることが多く、指揮者がいないので、これで今何拍目なのかを共通理解しているらしい。笛の調子が二度上がると掛け声も調子を変えるらしい。互いに響き合っているのですね。