名作を読む94
ゲーテ作「君よ知るや南の国」を読む
原題は「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」というもっとずっと長い物語で、主人公が少女ミニヨンと出会った場面だけを、少年少女向けに抜き出してある。
父の言いつけで商いの旅に出た若者が、行く先々で様々な悩みを抱えている人と出会い、その経験を通して成長していく物語です。
若者ヴィルヘルムは常に悩める人に寄り添い、ともに解決の道を探ろうと試みている。また、若者は根っからの演劇好きで、遂には一座の座長となったり、主演のハムレットを演じたりするのだが、いろいろなトラブルが起き成功は長続きしない。まるで運命の女神が若者を翻弄しているかのようだ。
さらに運命に翻弄されているのは、少女ミニヨンでサーカスの団長から虐待を受けているところを、ヴィルヘルムに助け出されるのだが、サーカスに売られる前の過去を幼かった彼女自身は知らない。曰くありげにミニヨンを影のように見守る老人アウグスティンがいるのだが、二人の関係は二人が亡くなるまで解き明かされない。ただこの二人が南の国イタリアに強い憧れを抱いていたことだけが、彼らの歌から分かるだけなのだ。
ところで、少女ミニヨンが歌う「君よ知るや南の国」は、名だたる作曲家にインスピレーションを与えて、有名どころでは、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ヴォルフの曲がある。
シューベルトのミニヨンをどうぞ。
失恋に終わっているが、74才になっても19歳の女性を好きになり、成就しなかった結果が詩集として残った。この底なしの若々しさというかエネルギーはいったいどこから湧き出てくるのだろうか? いくら真似をしたくても、ゲーテには叶わないなぁ。