オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび547

小西正一「小鳥はなぜ歌うのか」を読む1

 


普通、動物が声を発する時、それを鳴くとか吠えるとか言う。けれど小鳥の鳴き声は「歌う」なのだ。中世のヨーロッパ人は小鳥に鳴き声をフラジオレットで学習させようと企んだ。小動物とのコミュニケーションとして微笑ましい。

なぜ? どうして? と問い始め答えを探すことで、人類は科学を発達させてきたのだ。「小鳥がなぜ歌うのか」「そんなの歌いたいからに決まってるじゃん!」と曰う御仁は、この本を手にすることがないかもしれない。

洋の東西を問わず演奏者・作曲家にとって、最大の課題は、聴き手が飽きたり寝てしまったりすることをどう防ぐか? です。小鳥の世界にも似たような工夫はあり、聴いている雌が飽きないように、次々と歌のパターンを変えるのだそうだ。歌の長さは、ヒバリのように長く歌い続ける鳥から、数秒で途切れる鳥までいろいろで、個体差があり同じ種だから同じように鳴くわけではないらしい。さらに方言、つまり地域差がある。おそらくは生息する環境に適応するための知恵の蓄積なのかもしれない。人間が全世界の音楽を一つの音階で処理しようとしていることとは対照的な気がする。

前置きが長過ぎました。いよいよ「なぜ鳴くのか」に入る。最初に出てくるのが縄張りを守るためで、スピーカーから鳴き声を流すだけで、威嚇するために縄張りの主が飛んでくるらしい。

お次が雌を惹きつけるため。ところがただ鳴けばいいってそんな生易しいものではないという。カエルやコオロギは雄が鳴くと雌が反応するらしいが、小鳥はそうはいかない。持ち歌のレバートリーが豊富で、しかも美しい雄がモテるというのだ。ダーウィンはそれを性淘汰と呼んだ。春になり男性ホルモンの量が増えてくると鳥はさえずりだす。やがてパートナーが見つかり、交尾を経て産卵抱卵の時期になるとホルモンは減り、鳴く回数も減ると言う。なるほど。

3番目が個体識別。人間だって声で相手が誰かを聞き分けるように、鳥も声を使って暗闇の中や群衆の中でパートナーを見つけている。小鳥ではないが南極のペンギンなどは大群衆でしかも巣を移動してしまうので、声は鳥たちにとってもとても大事なコミュニケーション手段なのです。

f:id:hoihoi1956:20230705051020j:image