オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび548

小西正一「小鳥はなぜ歌うのか」を読む2

 


「どこでどう鳴くか?」は、周波数との関わりで説明してくれる。一般に森の中の小鳥は低周波で鳴く。高周波の声は樹々の枝に遮られて届かないからだそうだ。それよりも大切なのは、自分達を捕食するタカやフクロウからどう身を守るか? またそれをどう知らせるか? タカの可聴範囲を超えた周波数で鳴けば、仲間に知らせることができて、自分の位置もわからない。フクロウに対しても特定しづらい鳴き声を工夫していると言う。

「習わないとダメなのか?」と言う疑問については、若鳥を防音壁で囲われた部屋で育てる実験を紹介している。人間か言語を獲得する過程と同じように若鳥は師匠である成鳥から鳴き方を教わらなければ、正常な歌い方ができないのだ。人間が教育を受けるのに適切な期間があるように、学習に適した時期が小鳥にもあるらしい。若くないと覚えられないのだ。オウムに人間の言葉を覚えさせるためには、まず人間が仲間であるとオウムが感じることが先決らしい。その後に脳のどの部分が鳴き声を制御しているのか? にふれている章がある。脳の構造の究明に、小鳥の鳴き声の研究が寄与していたのだ!

本書では、鳴き声に関する仮説と数多くの比較実験の結果を紹介しているが、実験に使われる野性の卵や小鳥は捕まえてきたものだ。捕獲の苦労話、さらに卵から孵ったひなを育てることが如何に大変なことか、書かれている。

 


誰にどのように対面して、言語を習得したか? の過程は人間も小鳥も似ている。日本人家庭で、親の発音に親しみながら育つことで、日本特有の母音や子音発声を習得するのだ。それは母音の種類が多い言語やlとrの使い分けが上手くいかないことに影響する。「たかが鳴き声、されど鳴き声」で、実に本書の扱う領域は広い。しかも30年近く前に出版された本なのだ。発音発語にそれなりに興味を持っている人には、お勧めしたい本です。

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