オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび583

伊藤悟「ひょっこりひょうたん島 熱中ノート」を読む

 


著者は「ひょっこりひょうたん島」を記録し尽くした少年です。ひょうたん島の放送回数は1224回。今ならスマホで動画撮影すれば済むようなことを、ひたすらセリフや字幕、背景、人形の動きをノートに書き写していたというから驚く。やがてテープレコーダー(オープンリール)を買ってもらえたので、ノートには絵だけを描くように変わった。

すごく行動的な少年であり、何と手紙を書いて、川崎市にあるひとみ座の稽古場、さらにはNHKのスタジオを訪問する。

ご存知の方も多いでしょうが、1990年ひょうたん島のリメイク再放映計画が立ち上がる。筆者のノートが重要な資料になったのだ!

ストーリーの振り返りに続いて、ひょうたん島の住人(キャラクター)の紹介が始まる。ひょうたん島で最も目立っているのはドン・ガバチョ大統領だけど、それは最も長い間喋り続けている結果で、主人公とは言い難い。ひょうたん島のピンチを素晴らしいアイディアで救う博士は研究オタクなところがあり、時として悪に加担してしまうので、これまた主人公と言えるかどうか? ダンディさんは圧倒的にカッコいいのだけど(よく口笛を真似していました)、ストーリーを離れたところから眺めているようなクールさがあり、なくてはならない人だが、主人公ではないだろう。その他のキャラクターもその状況に応じて自己判断で好きなように振る舞う(特にトラヒゲ)ので、あるポリシーとか価値観に貫かれているとはとても言い難い。主人公対敵、正義対悪というお決まりの構図からズレている。よく言えばひょうたん島は「みんな違ってみんないい」多様性社会を具現化した物語だし、ちょっと節操がないお話だったのだ。でもそれはあの時代の日本を井上ひさしというフィルターを通して、描いた「島」だったのかもしれない。

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