オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび639

椎名誠「漂流者は何を食べていたか」を読む

 


この本のネタは、生きて戻った人による漂流記。残念だが帰還を果たせなかった漂流者のことはわからない。それを生きて戻れたのは知恵や技術があったからだと、またはクルーのチームワークがよかったからだと決めつけてはいけないと思う。理由の大半は、やはり幸運だったのだと思う。遭難の理由が不運であるとほぼ同じ割合で。

椎名誠の特徴は、実体験に基づいた文章がデフォルメを軽薄体などと揶揄されながらも、体験と文章のギャップが大きく、その面白さが共感を呼んできたことでしょう。この本においても、漂流記の抜書き的な部分より実体験を踏まえて書いている(本書で言うとアリューシャン列島のアムトチカ取材の記録)箇所の方が、俄然生き生きして引き込まれる。

本書は、一話一話が波瀾万丈のサバイバル冒険物語であり、短編集として楽しみながら読むことをお勧めします。

どれもこれもワクワクドキドキなのですが、最後に収められている竹筏ヤム号による冒険漂流は、そもそも日本人はどこからやってきたのか? という問いと絡んでいます。ボクは、先日三内丸山遺跡を見学してその広大な交易範囲に驚いたのですが、原始的な船に乗って時には漂流しながら日本列島にやってきたのは、私たちのご先祖様の姿そのものなのかもしれません。

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