オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび446

コロナ・ブックス編集部「諸星大二郎の世界」を読む

 


本書は学者や評論家によりそれぞれの視点から、諸星大二郎の世界を語った文と諸星自身の漫画から構成されている。

水木しげるの妖怪世界でも、つげ義春ねじ式」のシュールな夢幻の世界でも楳図かずおワールドでもない画風。人類が辿ってきた神話や伝説を下敷きにして、摩訶不思議な世界を構築している諸星大二郎。きっと手塚治虫宮崎駿庵野秀明も、大いに刺激を受けたに違いない。高橋留美子に至っては、うる星やつらの主人公の名前にしてしまった。

諸星作品をクトゥルー神話の影響から語ろうとする評論家がいるようだ。説明が付かない=得体の知れない代物に対して、必死で解説する言葉を探そうとしているかのようだ。我々がわからないものが世界にまだまだたくさんあることを前提にしないと、諸星作品を直感的に理解することとは難しいだろう。

彼が足立区本木町で育っていて、荒川土手からよくお化け煙突を見ていたと言う。今は撤去されてしまったけれど、ボクも子ども心におもしろいなぁと感じていた一人でして。たしか歌まであったはずなんだけど。この奇妙な風景と彼の描く不思議な世界はどこかで繋がっていないかな? などとボクもしょうもない邪推をしてしまいます。

私には子どもの頃まだ怖いものが周りにたくさんあった頃のおどろおどろしい恐怖感が、作品の中に満ちている気がする。こわい夢をたくさん見て飛び起きていたあの頃の体験を、もう一度呼び覚ますような世界が広がっていると感じています。