オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび392

ショーペンハウエアー「自分の頭で考える」を読む

 


「本を読むとは自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。たえず本を読んでいると、他人の考えがどんどん流れこんでくる。・・・自分の頭で考える人にとってマイナスにしかならない。」いやはや、したり顔で読後感想を書き込んでいるボクにとっては背中に冷や汗のような警句です。人の言葉を引用して、あたかも自分自身でその思索の到達点に行ったかのように他人に権威をひけらかしている人、そんな人を批判しているようだ。

 


ショーペンハウエアー「著述と文体について」を読む

 


本を書くことでお金を稼げるようになったことが作家の堕落を招いたと言う。本当に優れた作品は無報酬で書かれた作品だと。生活の糧を得るために「書くために書く」というよくわからない自転車操業に陥っている物書きに向けた警句だろう。「あっ、このブログはそんなことはありませんよ」念のため。

話は文芸批評・評論に向かう。悪書を駆逐する本来の仕事に向かうことなく、著作家は結託して、互いの利益を守ることに終始していると嘆いているが、中でも匿名の評論批評についての鋭い見解は現在のSNSにおける誹謗中傷を思い起こさせる。

「できる限り偉大な知者のごとく思索し、しかも誰もが使う言葉で語れ。」と言う。その反対は、ありふれたがいねんを高尚な言葉で包み、ごくありきたりの思想を並外れた表現、わざとらしく気取った奇妙な言い回しにくるもうと努める。世に言う修辞法とは、自分の思いをより伝えやすくするためのスキルだと思っているのだけど、時として修辞のための修辞みたいな、皮を剥いていったら芯には何もなかったような文章に出くわすのは困ったものだ。

流し読みをするとブツブツ文句を垂れている老人のようなショーペンハウアーの文に、はっとさせられるフレーズがしばしば挟まっていることを見逃してはならないだろう。