宮本亜門「アライブALIVE」を読む
本書は、冒頭から衝撃的であります。自作のミュージカルを引っ提げたアメリカ公演の直前に世界貿易センターのテロ事件が起こったのです。
この本は自伝ですから幼少期からの足跡を辿る訳です。演劇に開眼する前の宮本少年の特徴は二つ。母親が元松竹歌劇団のダンサーで幼い時から沢山の芝居や踊りを見てきたこと。もう一つは友だちができないで、登校拒否=引きこもりを経験していることです。
人を変えるのは、結局は人との出会いなのですから、宮本少年も精神科のお医者さんとの出会いで学校に復帰して、恩師岡田先生との出会いから演劇の世界にのめり込んでいく。
読んでいて感じるのは、感情の振幅とシンクロする行動の速さです。東京→ニューヨーク→ロンドンと大好きなミュージカルのためなら、どんどん衝動的に動く。そして初演出作品「アイ・ガット・マーマン」のヒット。この本は2001年の出版だから亜門さんが沖縄での生活を始めた辺りで終わっている。その後20年、彼が自分にしかできないことを求めて走ってきた軌跡を私たちは辿ることができる。それは誰から強制されたわけでもなく好きだからこそ続けてきたことなのだ。自分のポテンシャルを解き放つ一例がここにある。