坂東三津五郎「踊りの愉しみ」を読む
踊りを観る前に、出→くどき→手踊り→段切れ という流れを知っていれば、もう少し今の踊りはどこの部分なのかな? という見方ができるでしょう。
琵琶歌だつて、前語り、本語り、吟変わり、崩れ、後語りの部分と地、中干、大干、切という唱法を予備知識として知っていれば、もっとわかりやすく聴けるかもしない。けれど、それらのことをなぜ知らないのか? 伝統芸能を学んでいる人が身近にいないからのような気がします。
大山の能舞台で「山帰り」を踊られたエピソードで、奉納で踊ることと、お客様に喜んでいただくために踊ることの違いを語っている。恥ずかしながら私も琵琶の奉納演奏の経験があり、ちょうど参拝客がいなかったので、本当に神様に向かって演奏しているような感じだった。そしてその違いは、三津五郎さんも語っているように目線のさきに何を見ているのか? ということかもしれない。
ジャンルを超えている演目がいくつかあって、本書に出てくる「道成寺」や「靭猿」は、歌舞伎でも琵琶でも演奏される。本書は坂東流で受け継がれてきた踊りがたくさん紹介されているけれど、それぞれ踊りを観るときの参考になる。美しい踊りの背景にどれだけの気遣いが張り巡らされているのか? もわかります。
クラシック音楽を聴きに行くときだって、ある程度の知識がなければ。「ああ、きれいな音でした。」で終わってしまいます。日本の伝統芸能も、現代の生活からはかなり遠い時代の物語なのだから、事前にある程度のことを知っていないと分かりづらい。また所作の工夫について、例えば足の上げ方に如何に神経を使っているか? など文章だからこそ素人にも少しだけわかる。
本書のようにその道の達人名人が、わかりやすく舞台裏を解説してくれる本が本屋や図書館にたくさん並んでいるといいなぁと感じました。
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