オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび576

田中健次「図解 日本音楽史」を読む

 


自分が親しんでいる琵琶でさえ知らなかったことが多い。本書によれば、雅楽の楽琵琶はペルシャ起源で7〜8世紀にシルクロード〜中国経由で日本に伝えられた一方で、盲僧琵琶ルートは、インド起源で6世紀に三国時代の中国経由で九州に伝えられたという。何と、雅楽の琵琶より早く伝わったのだ。

また琵琶と言えば「平家物語」というイメージが先行しているけれど、では源平の戦いのまえに活躍した琵琶法師たちは何を語っていたのか? 蝉丸、源博雅藤原師長など名手たちは、中国の皇帝や英雄たちの物語を語っていたらしい。また「法師」を名乗っていても寺の僧ではなく、求めに応じて琵琶を奏し報酬を得る芸能者でした。平家物語を語り始めるのは、そののちの時代のことです。

話がこんがらがってしまいそうですが、琵琶法師とは別に盲僧琵琶というれっきとした寺に所属し法要を行う集団が江戸時代頃から九州に展開していて、現在の琵琶楽に影響しています。

詩吟・吟詠の愛好家は、琵琶奏者に比べてとても多い。でも実は吟詠は琵琶歌から分かれたのだそうだ。確かに琵琶歌には和歌や漢詩が挿入されている。どうやらその部分が今では別ジャンルの吟詠に変化しているようなのだ。江戸時代初期に琵琶法師により三味線が開発されて、人々が琵琶より三味線に惹かれていったように、琵琶の詩文が吟詠として独立し、琵琶は吟詠の伴奏に回るなど、どうも琵琶楽はおいしいところを他の芸能に持って行かれている気がする。別にいいけど。

古代から現在に至る日本音楽の変遷がジャンルごとにまとめられている本書は、邦楽の歴史を学ぶための格好のガイドブックだと感じました。

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