オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび510

山田耕筰「はるかなり青春のしらべ」を読む3

 


小山内薫がベルリンにやってきて、山田耕筰に真の芸術家として歩み始めるきっかけとなる一言を告げる。作曲とか音楽者へのこだわりから解放された瞬間なのだ。それにしても人は人との出会いにより成長し、変化する。演劇の小山内、音楽の山田、日本の文化史に輝ける足跡を残した二人がベルリンでデカダンス芸術やニーチェについて語り合っていたのだ。

日本の音楽を開拓する屯田兵たることを使命と感じた山田耕筰は、ドイツのヴェーバーやロシアの

グリンカのように歌劇の作曲によって道を拓く方針を固めた。そして完成したのが日本初の本格的な楽劇「堕ちたる天女」。同時期の作品として卒業制作でもある管弦楽付き合唱曲「秋の宴」がある。楽譜は出版されているが、残念ながらせっかくの合唱曲なのに津々浦々で演奏されている様子はない。

ドイツを代表する作曲家である二人のリヒャルト、ヴァーグナーシュトラウス。ロシアのスクリャーピン。演劇への尽きぬ関心、中でもモスクワでスタニスラフスキー演出による劇を観ている! 日本の詩人たち。様々な表現に心を揺り動かされながら、そして振幅の大きな苦楽を体験しながら、山田耕筰は留学生活を送った。そしてそれらは帰国後の華々しい音楽活動の中で、貫き通した感性の基となったのだろう。

青春記には名著が多いけれど、山田耕筰の自伝もその列に加えられるべき本だと感じました。

 


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