山田耕筰「はるかなり青春のしらべ」を読む1
コロナ禍で学校が休校だった頃、朝ドラで古関裕而を主人公にした「エール」が放映されていて、作曲界の重鎮として山田耕筰がでているわけですが、演じていたのが生前の志村けんさんでした。確かに頭髪が寂しい感じは共通でしたが、最後に演じていた役柄として記憶に残っています。頭髪と言えば、山田耕筰の作にタケカンムリが付いているのは、ケを生やしたい願望だったというエピソードが伝わっています。
瀧廉太郎、宮城道雄と並んで、音楽室に肖像画が掛けられている山田耕筰ですが、小学校の教科書に出てくるのは「赤とんぼ」「この道」「待ちぼうけ」「ペィチカ」あたり。いずれもイントネーションに配慮した旋律が美しい曲です。
さて自伝は、幼少期を語り始める。泣き虫、臆病で怖がり、美しいものに憧れていた子ども時代を断片的に綴っていく。一言で豊かな感受性と括ってしまうけれど、それは感情の振幅が大きいことと隣り合わせです。感性のあり方は人それぞれだし、だからこそ様々な個性的な表現が生まれるのだろう。感じ方に○×を付けては、子どもは萎縮してしまうので、その感じ方を大切にしていいんだよと認めている大人の存在が必要なのでしょう。そんな大人がきっとどこかにいたのでしょう。山田耕筰少年は、幼少期から作曲家を志していたようです。