オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび537

金井良太「脳に刻まれたモラルの起源」を読む

 


ボクの読書履歴を辿ると、一周回って元に戻って来ました的なところがあって、オヤジのあくびで言うと434〜道徳や倫理関連の本を読んでいる。

モラルファンデーション理論。傷つけないこと、公平性、内集団への忠誠、権威への敬意、神聖さ・純粋さという五つの道徳感情を根幹とした理論が紹介される。それぞれが脳内でどの程度機能しているか? で各人の政治的な傾向がわかると言う。また恐怖や不衛生なものに対する嫌悪感も傾向との親和性があるらしい。

日本人は常に災害に怯えて生きてきたので、不安を祓う信仰が根付いたのだろうし、保守・現状維持政権が続いていることも、急激な変化を求めない傾向からくるのかもしれない。また私自身もいい歳になってきて、それなりに保守的になっている気がするが、これも加齢と共に脳の傾向がどう変化するか? 研究対象になっていると言う。

続いて評判の話。他人の眼を気にする。匿名性が高くなったインターネット社会では、誰かに直接見られている心配がない。またそれによる不正行為もある。パソコンのデスクトップ画像に他人の眼を貼り付けておくことで人の行動がより正直になった実験を紹介している。

最後に幸福度。日本に特有のデータを二つ。高度経済成長成長期を通して所得が5倍に増えたが主観的幸福度は変化していない。もちろん失業は防がなければならないのだが、収入と幸福度に関連はないのだろうか? また、海外は定年の頃に幸福度がV字回復するのに、日本は下がりっぱなしと言う。

そこでソーシャルキャピタル、平たく言えばここでは友だちや仲間のことだ。主観的な幸福度を上げるために大切だと説く。そこで当ブログがリンクしているFacebookFacebookの友達の数は、脳内の社会的な信号の知覚に関する部分と関連があると言う。

幸福には感覚的な快楽と自己実現の喜び=エウダイモニアがある。前者は金銭によって得られても、後者は生き方そのもの。ソーシャルキャピタルとエウダイモニアについて語り、本書は終わる。

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