オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび564

若林忠宏「入門 世界の民族楽器」を読む2

 


音楽の歴史というと、音楽の父母であるらしいバッハ・ヘンデルあたり、1700年代の後期バロックから連なる西ヨーロッパの大作曲家の作品群を連想してしまう。また知識の範囲が特定地域と特定時代に偏ってしまっている。それはやはり鍵盤楽器という一度に最大10の音を自在に奏でることができる最強の楽器が西欧で発達したからであろう。

本書の魅力は、抜け落ちてしまっている音楽史をより広い時代と地域についてフォローしてくれることです。

小学校4年の音楽の教科書に登場して、港南台アカペラシンガーズでも歌っているチェロキー族の「朝の歌」という曲があります。ところが歌詞の意訳は出ていても、いつどのような場面で演奏されていたのか? 書かれていない。本書はアニミズムからシャーマンの登場を経て宗教における音楽という文脈で語っているけれど、この「朝の歌」には宗教に至る前の音楽を感じます。

本書に亀慈国という国名が、頻繁に現れる。ペルシア・インドから中国に至るルートで、数多くの楽器がこの国を通過している。琵琶もこの国を通過していた時点では、四絃と五絃があったのに、最終到達地である正倉院の五絃琵琶は世界に一つしかない。日本への通過地である中国で五絃琵琶が消去されたと筆者は語る。本書では、世界各地を移動した人々のうち、ジブシー(ロマ)は移動先の楽器を活用して演奏し、ユダヤ人は楽器と共に移動したという。今現代でもクラシック音楽界はユダヤ人が素晴らしいパフォーマンスを繰り広げている。移民の歴史で培われた文化とどこかで関連するのでしょうか?

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