オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび587

中島義道「カイン」を読む

 


タイトルの「カイン」は、旧約聖書で弟アベルを殺した兄であります。主によって殺されぬ「しるし」が付けられたカインは、苦しみ悩み続ける日々を送る。本書では青年Tに寄り添いながら、彼が立ち向かい排除していくべき相手は何なのか? を説いていく。

60代も半ばを過ぎてから、この本を読んでいる。もしボクが青年期にこの本と出会っていたらどうだったのか? そんなifが頭を掠めます。

親を捨てて期待に背くことを語るのは、著者の半生を重ねているのだろう。額面通りに受け止めると逃げ場のない袋小路へ追い込まれることになるが、それこそがおそらくは本書のねらいと思われる。

結局、この本は、世間様と折り合いを付け妥協しながら生きていくことに悩んでいる青年への指南書なわけだが、もう会社や組織に順応する必要がなくなったシルバー世代が読んでも面白い部分があるのではなかろうか? ただボク自身をものさしにすれば、若かった頃の不条理を不条理と思わなかったヤケクソ的なパワーが今は足りない。

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