オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび590

梓澤要「方丈の孤月」を読む

 


前半は、煩わしいとさえ感じる中世貴族社会の人間模様の中で、若い鴨長明が要領よく立ち回れない様子が描かれている。由緒ある下鴨神社の御曹司としてのブライドや両親を亡くした哀しみが、主人公のコンプレックスの背景にあるのかもしれない。

方丈記」の作者という私たちが知っている長明像を超えて、歌人、琵琶奏者としても活躍した様子を語っていく。この小説の中では和歌や琵琶を通して自分を認めさせたい長明の自我を描いている。ところが屈折した心情から湧き出る衝動が長明を突き動かし、結果的に天涯孤独の身となっていく。

もう一つ伝説として広まっているのが「平家物語」の作者は「実は鴨長明ではないか?」という話。この小説では桜丸という少年が琵琶を携えて語り始めたということになっているが、真相はわからない。

オヤジのあくびも随筆のつもりと言ったら、一笑に付されるだろうが、物語の最後の方で「方丈記」を執筆する長明が描かれている。自分が見聞きしてきた真実=私の真実を書き留める。長明との共通点は老境に差し掛かったことくらいしかないけれど、ボクなりに拙い表現で書き続けていこうと思う。

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